多紀連山ガイドマップ

丹波修験道場の山

多紀連山の御嶽を主峰とする峰々が丹波修験道場の中心となったのは、いつ頃か定かでないが鎌倉から室町時代にかけてといわれている。
一時は興隆を極め、入山する行者は後を断たず、山々には法螺の響き、錫杖の音、念誦の声は谷に、里にこだまし、正に信仰の山であった。
主峰御嶽の南側直下に大岳寺を始め、数カ所に堂が建ち、東の小金ヶ嶽の頂上には蔵王堂、そしてその南側直下には福泉寺を始めとする寺々、さらには、入山前にする里行のための里坊などがあった。
しかし、隆盛を誇った丹波修験も室町時代の文明14年(西暦1482年)に大和修験道との勢力争いに敗れ、寺々などことごとく焼失してしまった。
 
そして、今も修験道場の行場を巡って行き着くと「東の覗き」「不動岩」「西の覗き」愛染窟」などの行に関する地名に出会うことができる。その行とは表と裏の二道に分かれており、表は金剛界廻りといってまず筱見四十八滝から峰々を経て御嶽頂上の行者堂へ。裏は胎蔵界廻りといい、御嶽頂上から西に向かい、西ヶ嶽を通って里の養福寺に入って滝の宮で水行をして終わる。
 
 
多紀連山の画像
 

多紀連山登山道マップ

多紀連山登山道マップ画像

多紀連山山歩きガイドマップ(PDF:2.3MB)
 

見どころポイント

多紀連山(多紀アルプス)
篠山盆地の北方に連なる標高600から800メートルの雄大な連峰で、東西20?に及び多紀連山県立自然公園として親しまれている。主峰の御嶽(793メートル)を中心とした。東の小金ヶ嶽(726メートル)、西の西ヶ嶽(727メートル)の三峰がその象徴である。
古生層の岩質は珪岩で、険しい岩場の分水嶺をつくる。南の水は加古川を経て瀬戸内海に注ぎ、北の水は由良川を経て日本海に入る。
四季を通じ数多くの植物に恵まれ、ことにツツジ・シャクナゲの類が多く、イワカガミ・オサシダ等高山植物もある。秋のウルシ・ヌルデ・カエデ・ケヤキ・ナラの紅葉と晩秋の雲海は特に美しい。
また、兵庫県で絶滅危惧種にも指定されているクリンソウの群落を見ることができる。
 
 
御嶽(三嶽)(793メートル)
多紀連山の主峰で古くは藍婆ヶ峰と呼ばれ、頂上は2つの峰からなり、西側が最高峰で三角点があり、東側には石室がある。峰の北側は急峻で下る道はない。南側の直下に修験道場の本山であった新金峰大伽藍大岳寺(だいがらんみたけじ)の跡がある。
毎年5月の山開きの行事は、この山頂で実施され、丹波大峯会員が山伏姿で吹く法螺の音と共に盛大に行われる。東の峰からのパノラマは特に素晴らしく、東方より京都愛宕山、大阪生駒連峰、南の六甲山、播磨灘、西に但馬栗ヶ峰、北に丹波大江山、丹波長老ヶ岳が遠望できる。
 
小金ヶ嶽(726メートル)
山容は御嶽の雄大さに比べ、岩肌の荒い珪岩質の奇岩が露出し、岩場に富んでいる。特に北側は、峻崖で獣の近づかない。頂上は狭いが展望は素晴らしく360度視界が広がる。古くは蔵王堂があったところから蔵王ヶ岳と呼ばれ、御嶽と同じく修験道場の山であった。
 
西ヶ嶽(727メートル)
山形は雄大なもので南に多くの尾根を有しながら北面は山頂から絶壁で大小無数の岩場があり、一歩誤れば千尋の谷に落ちる箇所が所々にあり、その岩場を選んで咲くようなシャクナゲの花とのコントラストが一段と美しい山である。
山頂にはどうした訳か「一の池」という石組みの小さなくぼみがある。
 
おおたわ
御嶽と小金ヶ嶽の中間の鞍部の峠である。修験道場時代の堂跡であったといわれているが、今は山岳道路がここを通り西紀に通じている。展望台、水場、トイレや駐車場もあり、御嶽、小金ヶ嶽の登山基地となっている。
 
筱見四十八滝
多紀連山の東端に位置しており、始終(しじゅう)かれることがない滝が8つあるところから、この名がある。下流より、手洗い滝、弁天滝、肩ヶ滝、長滝、シャレ滝、大滝、二の滝、一の滝で、その昔修験道行者達はこの滝で水行をして出発したという。春は桜、夏は渓流、秋は紅葉、キャンプもできる憩いの場である。また平成元年度から3年度にかけて上筱見生活環境保全林事業として63ヘクタールの森林に車道、歩道を整備して、約一万本の樹木を植栽している。
筱見四十八滝の画像
 
鍔市ダム
農業かんがい用水として昭46年に総工費5億6千万円をかけ完成した。高さ34.5メートルのダムで周囲3キロメートル、面積9.1ヘクタールの湖面が広がる。周回道路にはサクラ・カエデが植栽され、湖にはブラックバス・ブルーギル・フナ・コイなどが生息しており、釣り人を楽しませている。 
 
栗柄
この地には、御嶽修験道場の最終の行「水行」をした滝壺があり、ここに「倶利加羅不道明王」が祀られている。又、この近くには昔から伝えられている手織木綿の「丹波木綿」を織っている創作館がある。東へ2キロメートル行けば、田の水が、日本海と瀬戸内海とに分かれて行く中央分水嶺になっている鼓峠がある。 
鼓峠の画像
 

登山道コース

【四十八滝~栗柄】全山縦走コース
筱見四十八滝の広場を滝に向かわず、橋を渡り、杉林の道を登ると稜線を左にとって進み、1・2回の起伏を越すと一気に鞍部に下る。川阪峠の484メートルである。右は川阪、左は鍔市ダムを経て火打岩に出られる。小金ヶ嶽への道は稜線を再び登る。左下に鍔市ダムを見ながら10回近くピークを越すと小金ヶ嶽頂上に着く。狭いが展望はよく、360度の視界が広がる。東に京都の愛宕山、南東に大阪の生駒山、南に六甲山、西に栗ヶ峰、北に大江山、長老ヶ岳と連なる。西に立ちはだかるのが主峰御嶽である。その方向に出ると岩場に出る。北側(右側)は崖になっているが道は岩峰の南側の基部をまいているので注意すれば危険なことはない。道が岩峰の北側を過ぎると岩場は終わる。雑木林を一気に下り、杉林を抜けると最大の鞍部であるおおたわである。縦走コース唯一の水場である。
おおたわより御嶽に向けては急な坂で階段上の登山道を登るとすぐ頂上である。かつては行者堂であったが今は岩室がある。頂上は2つの峰からなり、その中間の鞍部より南へ下る道は大岳寺跡を経て火打岩、瀬利、丸山に出られる正面道である。西の峰を通り西に向かうと一気に下る。「西の覗き」を過ぎると稜線上で西ヶ嶽と栗柄への分岐点に着く。西ヶ嶽へはかなり険しいがはっきりしており、西ヶ嶽頂上の展望もよい。西ヶ岳頂上より下る道は分岐点まで戻り北に折れ、「愛染窟の洞」を経て茶畑を通って栗柄の里に出るコースもあるが、分岐点をそのまま進み、守護岩を右に見ながら栗柄口へ下るコース登山道も整備されている。 
 
【瀬利~御嶽】御嶽正面コース
JRバス停御嶽口より左の山裾を回り、急さかを登り切ると丸山、知足より来る道と合流し、尾根沿いに進むと再び右手の火打岩よりの道と合流する。なだらかな尾根道を進むと鳥居堂跡に着く。正面に御嶽、右に小金ヶ嶽がよく見える。やや傾斜が増し、道が急に左へ曲がる所で少し下ると水飲み場がある。このコース唯一の水場で昔の行者も渇いた喉を潤した場所だ。すぐ上の笹原が大伽藍大岳寺跡で礎石が今も点在する。この辺より急坂となり岩場もあり、一歩ごとに高度が増す。岩場には数体の石仏があり桧林の中に笹が見えてくるとすぐ頂上である。 
 
【鍔市ダム~川阪峠】小倉たわコース
鍔市ダムの周回道路を奥に行き、杉林を抜け、谷沿いに進む。橋を過ぎるとすぐ分岐点に出る。左に登ると小金ヶ嶽直下の鞍部に通じる。川阪峠は右に進む。この辺は道が判りにくいが左谷川沿いに登るとはっきりした道に出る。その道を登り切ると小倉たわに出る。向側に下ると川阪、右は筱見四十八滝、左は小金ヶ嶽に通じる。
 
【火打岩~小金ヶ嶽】小金ヶ嶽正面コース
JRバス停小金口より右正面に見える天王の森の右手に入り、砂防堤に沿って渓流沿いを登るとやがて福泉寺跡に出る。礎石が点在し、庭をも偲ばせてくれる。松林の斜面を登ると尾根に出る。木立の間から露岩の多い小金ヶ嶽が前に立ちはだかる。少し下って鞍部に着く。右に下ると鍔市ダムの上流に通じ、左下に下るとおおたわへの自動車道に通じるがいずれも険しい。小金ヶ嶽への道は正面より登る、岩場の連続で修験道場にふさわしい。階段上の道をツツジの木に支えられながら登ると一歩ごとに高くなり、すぐ頂上に着く。

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